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2008年6月

爪を切る

母は、若い頃からほとんどオシャレをしない人でしたから、化粧はもとより爪を伸ばしてマニキュアを塗る、などということは一切したことがありませんでした。
髪と衣類の身だしなみには気をつけていて、髪は常にキチンと整えて乱れているところは子供の私も見たことが無いといっても過言ではありません。
衣類は安物ですが汚れたものを着ていることはなく、常に洗濯の行き届いた小ざっぱりしたものを身に着けていました。

今思うと・・・、髪を整えることに関しては、認知症が大分進んでも鏡を見ては櫛で梳かしたりしていましたが、自分で料理をしなくなった頃からは、爪を切ることを忘れたようでした。
手と足の爪が大分伸びても、全く気にする様子はなく、夏のある日、蚊に刺されたところを掻いて皮膚から血がにじんだりしているのを見て、爪が伸びていることに気が付き、切ることにしました。

お風呂で使う洗面器にぬるま湯を入れて、テーブルの上で手を浸してもらい、爪が柔らかくなってから切りました。まるで親が小さな子供の爪を切ってやるのと同じです。母は嫌がることはなく、されるままにしていました。
次は少し大きめのタライにぬるま湯を入れて床に置き、椅子に座った状態で脚を入れてもらって、脚を洗ってから爪を切りました。

初めてこの爪切りをしたときは、「息子にこんなことまでしてもらって済まないねぇ・・・」などとつぶやきながら涙をこぼしていました。自分で自分のことができないことに気が付き始めて悲しかったのでしょう。

私は自分の子供の爪を切ったことを思い出し、深爪にならないように気をつけながら、子供は途中でムズかったりして大変だったけど、年寄りは簡単だな・・・でも、子供は可愛いけど、正直言って年寄りは可愛くない・・・などと残酷なことを思いながらやっていました。

今お世話になっている特養ホームへ面会に行った時も母の爪が気になります。
2回ほど、ヘルパーさんに爪切りを借りて、居室で私が切ってあげたことがありますが、先日面会に行った時は、きれいに切りそろえられていたので嬉しくなりました。
ヘルパーさんに感謝です。

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穏やかな生活

母が特別養護老人ホームに入所してから、だいたい2週間に1回の割合で面会に行っています。昨年の2月25日に入所して間もない頃は、私が行くと、母は涙をこぼして嬉しがってくれましたし、周囲の人たちも「良かったねぇ、優しい息子さんが来てくれたよ」などと言っていました。「お兄ちゃんが来ないと、毎日寂しがってるんだから・・・」とも。

入所してから早や1年4ヶ月になろうとしています。最近では私の顔を大分忘れているらしく、嬉しそうな感じはありますが、名前は出てきません。

若いときは、短気で感情の起伏の激しい人で、認知症になってからも、その傾向はあったのですが、以前に比べると、喜怒哀楽があまり無くなったように思えます。
しゃべることはできても会話はほとんど意味を成さず、意思の疎通はありません。

でも、私や弟にしてみれば、自宅に居た頃のような、一人でいる時間の不安はなくなりましたし、暑さ寒さの心配もありません。見知らぬ人が訪ねて来て、何かを売りつけられるようなこともないので、安心そのものです。
施設のヘルパーさんの近況報告には、「最近はよく笑顔が見られます」と書かれていて、
会話にはならなくても、少ししゃべっていると時折り、とてもオカシそうに笑います。幸せそうな一瞬を、毎回携帯電話のデジカメに収めて帰ってきます。あやすと、意味も無く笑う赤ん坊によく似ています。

穏やかな毎日が過ぎていくばかりです。

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ある朝のこと

以前にも増して手の掛かる状態になってしまった母を介護するようになり、一時は、このままでは、寝たりきり老人になってしまうのではないかと、心は重くなるばかりでした。
しばらくの間は、布団から起き上がると、以前は歩いて自室からリビングへ出てきましたが、這ってくるようになりました。
リビングまで来ると、いつも座っている籐の椅子につかまったり、テーブルにつかまったりしながらやっとの思いでその椅子に座ります。

1月のある朝、7時頃でした、私が朝食の用意をしていると、母が目覚め、這って来ました。いつものようにテーブルにつかまってやっと立ち上がり、椅子に腰掛けると、

母 「オハヨウ!」

私 「オハヨウ!今日は寒いけどいい天気だよ~」

母 「そうだねぇ~気持ちがいいね」「何してるの?」 

私 「うん、朝ご飯の用意、お味噌汁を作っているけど、具は何がいい?」 

母 「ソ~ねー、長ネギとお豆腐」 「済まないねぇ~、男の子にそんなことさせちゃって」

私 「もう慣れてるから平気だよ」

まったく普通の親子の会話をしていることに気が付くと、嬉しいような、悲しいような複雑な気持ちになり、ボロボロと涙が溢れてしまい暫くはどうすることもできませんでした。
その日のことを思い出すと、今でも涙が出てきます。

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